菌糸を使ったクワガタ幼虫飼育
– 国産オオクワガタを飼育しよう! –
国産オオクワガタの飼育と言っても、今はインターネットや専門雑誌などで沢山の飼育情報を得ることができるようになりました。
飼育に不安がある方の参考になればと思い、BRAS流の飼育法を順を追って紹介いたします。
まず、飼育にあたっては、最後まで責任を持って飼育できる数を把握し、その数を守りましょう。
そして、飼育のテーマや、目標などがあると充実したクワガタ飼育ができると思います。
ちなみにBRASのクワガタ飼育テーマは、『大人のクワガタ飼育』です。
少しでもご参考になれれば幸いです。
STEP1.種親選び
クワガタ飼育にもいろんな思いがあると思いますので、体長を優先したり、体型を重視するなど目標に向かって方向性を定めていただければと思います。
ただし、選ぶのも、飼育するのも『自分』なので、飼育するものの務めとして、後々、他人事のような言い訳をしないようにしましょう。
飼育する上での明確なポイントがあれば、選びやすいと思いますので、それを念頭に置き、種親を決めていただければと思います。
STEP2.ペアリング(交尾)
当店は毎年5月頃から交尾をさせています。
オスもメスも越冬経験済みの成熟した個体です。
オス・メスを同じ飼育ケースで1週間程度同居させます。自然と交尾を済ませることがほとんどです。
少し重さのあるエサ皿や、足場・隠れ家になりそうな木などを入れておくと良いでしょう。
管理温度は、25度前後です。
STEP3.産卵セットの準備
国産オオクワガタは、キノコ菌によって腐朽された朽木に多く産卵します。
産卵木・マット・飼育ケース・餌(昆虫ゼリーなど)を準備しましょう。
産卵木は、クヌギやコナラ産卵材・人工カワラ材などが使用されています。
飼育ケース底に産卵材を安定させるために簡易発酵マットを敷き、産卵材を入れます。
STEP4.産卵開始
交尾を終え、充分エサを食べ、産卵準備が整ったメスを産卵セットへ移動します。
オスは、メスの産卵行動の妨げになる可能性があるので、メスのみを入れます。
飼育ケース内の温度や湿度に注意しながら見守ります。
エサ交換時以外は、触れることはほとんどありません。
管理温度は25度前後です。
STEP5.産卵終了
メスを産卵セットに入れてから、半月~1ヶ月程度でメスを取り出します。
きっと、メスが産卵木を齧り、卵を産み付けていることだと思います。
メスを取り出した後の産卵セットは、卵が初令幼虫へと孵化するまで半月~1ヶ月程度保管します。
産卵セットを保管している間に、クワガタ幼虫飼育用菌糸ビンを準備します。
幼虫の割り出しを行った後、菌糸ビンを準備しても大丈夫です。
沢山の幼虫を飼育したい方は、複数回産卵させても良いかと思いますが、きちんと最後まで飼育できる数を守りましょう。
STEP6.割り出し
メスを取り出した産卵セットを3~4週間くらい保管したら、いよいよ割り出しです。
産卵木の中から幼虫を取り出します。
ドライバーなどを使いながら幼虫を傷つけないように慎重に削ります。
産卵木を割っていくと幼虫の食痕が見つかると思います。
予想もしないような場所で幼虫を発見することも珍しくありません。
STEP7.菌糸ビン1本目
割り出した幼虫が問題なければ直ぐに予め用意した菌糸ビンへ入れています。
幼虫の頭が色づき、腹部がピンク色以上濃くなっていればOKとしています。
菌糸ビンの準備ができていない時は、プリンカップなどで一時的に保管するといいでしょう。
1本目の菌糸ビンには、800cc程度の物で飼育される方が多いようです。
1本目の菌糸ビンで2~3ヶ月飼育します。
STEP8.菌糸ビン2本目
1本目の菌糸ビンで幼虫を飼育してから、2~3ヶ月くらいで2本目の菌糸ビンへ交換します。
♂幼虫は1400cc、♀幼虫は800ccの菌糸ビンへ交換しています。
ここでも予め菌糸ビンを準備しておきますが、幼虫を取り出して見ないと♂・♀の判別が分かりづらいので、♂4割、♀6割くらいと仮定して準備しています。
新しい菌糸ビンに、幼虫が丸まってスッポリ入るくらいの穴を空けます。
2本目の菌糸ビンで3~4ヶ月程度飼育します。
幼虫の性別
国産オオクワガタ3令幼虫の♂・♀を判別してみましょう。
チェック項目は以下の通りです。
- 幼虫全体の大きさや体重
- 幼虫頭幅
- ♀には、卵巣が見える場合が多い(画像は、卵巣)
- ♂には、肛門付近の腹側に線が出ている
STEP9.菌糸ビン3本目
幼虫の食べ具合と菌糸の劣化を見ながら3本目の菌糸ビンへ交換です。
この頃には幼虫も大きく育っていることでしょう。
ここからは、幼虫1頭ずつ様子を見ながらの飼育になってきます。
また、飼育温度が下がり始めてキノコが生えやすい状態になります。
ビンの通気口を塞がないように、たまにキノコを抜きます。
飼育温度は20度前後です。
STEP10.冬の幼虫飼育
国産オオクワガタは、季節を感じ、体内時計もしっかりしていると言われています。
幼虫にも冬を感じさせ、幼虫としての成熟をむかえます。
3本目の菌糸ビンへ交換し、20度前後で1ヶ月程度飼育したら、飼育温度を18~20度前後に設定し、この温度で1~2ヶ月くらい飼育していきます。
STEP11.前蛹~蛹
幼虫にとって冬の時期を経験させ、幼虫として成熟をむかえたら、徐々に飼育温度をあげ蛹化を促します。
蛹室を作成する前に、菌糸ビン内を徘徊する幼虫も出てくるかと思います。
菌糸ビン交換をするかしないか?難しい判断が必要になってくる段階です。
蛹室を無事作成したら、幼虫は、次第にシワシワになり前蛹といわれる状態になります。
STEP12.羽化
前蛹期間を経て、無事蛹になり1~1.5月程度で羽化します。
羽化したばかりの成虫は、非常にデリケートですので安静にしましょう。
オオクワガタ自身で這い出てくるまで待てればベストでしょうが、菌糸ビンから早く取り出したいものです。
当店では羽化確認後、1ヶ月程度で出しています。
でも、場合によっては待ちきれずに2週間程度で出してしまうことも…。